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音楽、IT、サブカル、アイドル、その他思いつくまま、ルサンチマンの雑記です。

ロック史上最高にDOPEなハズだった「SMiLE」というビーチボーイズのアルバムについて。

音楽好きだったりすると、「1番好きなアルバムってなに?」という質問を受けることあると思うんですよ。

 

青春時代に出会った音楽って良し悪しに限らず、一生好きだったりするしなかなか難しい質問ではありますよね。

そういう個人的なフィルターを取り除いた上で一枚選べと言われたら僕は迷わず「ビーチボーイズのSMiLE」と言いたい。

言いたいというのは文字通りで、事実上「SMiLE」というアルバムは存在しないからです。

 

この前アイドルライブの帰りにヲタクみんなでご飯を食べたんですけど、ウチ二人がヒップホップ畑の人で、DOPEなアルバムの話になったんですけども、僕はやっぱりデ・ラ・ソウルだなーなんて話もしつつ、ビーチボーイズちゃんと聴いたことある?って振ったんですね。「サーフィンUSAくらいしか知らない」と言われたんでこんな日記書いてます。

 

関係ないけどヒップホップ畑の人と話すのは本当に楽しいんですよね。あらゆるところから元ネタ引っ張ってくるんである意味1番音楽に偏見がない人達だなって僕は思ってるんですよ。

 

では「SMiLE」というのは何なのか。行ってみましょう。

 

 

The Beachboysは、1961年にアメリカ西海岸で結成さた、名前の通り、海!サーフィン!車!女の子!がテーマのわりと薄っぺらいバンドで、当時の青春を謳歌するアメリカの若者のニーズにピタリと当てはまって大人気だった。

 

The Beach Boys - Surfin Usa

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しかも彼らの初の大ヒット曲、この「Surfin' USA」はチャック・ベリーの丸パクリという徹底した軽さっぷり。多分皆さんも聴いたことあると思う。

一般では「ビーチボーイズ=サーフィンUSA」までの認知レベルだと思う。

 

しかし、ビーチボーイズにはもう一つ「別の顔」が存在する。

ビーチボーイズはそもそもツアーバンド的な存在で、スタジオ録音はプロが担当し、自分たちはほとんどライブで活動する、アイドルのようなグループであったのだが、

メンバーの一人「ブライアン・ウィルソン」が突然、ライブツアーを全てキャンセルし、病的なまでに音作りに没頭しだす。後に、世界中の音楽評論家やミュージシャンから「天才」と謳われたアーティスト、ブライアンの覚醒である。

ドラッグに溺れたブライアンは、音楽に対して常人以上の執着を見せ、とにかく自分の納得出来る音が出来るまで妥協は許さず一人で勝手にアルバムを作ってしまった。
ツアーから帰ってきたメンバーに残された仕事は「コーラスを録音するだけ」と言うまでの完成度だったそのアルバムは『ペット・サウンズ』(Pet Sounds)と名付けられた。

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ただ、ビーチ・ボーイズによる美しいハーモニーに、バズ・オルガンやハープシコード、フルートに加え自転車のベルやテルミン、犬笛と言った変わった道具での音響効果を多重録音により付け加えられて作られた、この革新的過ぎるアルバムは発売時、海!サーフィン!車!女の子!を期待していたアメリカでは不評だった。
発売元のキャピタルレコードが、慌てて今までのベスト・アルバムを出したほどだが、それが逆にブライアンの音作りの精神を更に追い詰めることになる。

 

ブライアンは次のアルバム「DUMB ANGEL(後にSMiLEに変更)」の制作に取り掛かるも、既にこの頃には、スタジオで砂場を作ったり、火を焚きスタッフ等に消防帽を被せたりと奇行が目立つ様になり、膨大なサンプルデータを残したまま、ついにブライアンの精神が崩壊し、未発表に終わってしまった。

 

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ブライアンはその後30年間、精神病と戦うことになるのだが、残りのメンバーは、このサンプルを参考に「Smiley Smile」と言う代理のアルバムを創り上げた。

 

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しかし、ブライアンに魅せられたファン達はそんな事では納得がいくはずもない。

キャピタルは、アルバム制作を急かすためにジャケットだけは完成させていた上に、SMiLEの未完成のスタジオデータはいわゆる「ブートレグ」と言われる、海賊版として、世に出回っていた。

SMiLEはそのテーマである「神に捧げるティーンエイジ・シンフォニー」と共にロック史上最も有名な未発表アルバムとして、歴史に残ることになった。

 

これが、ファン達の探究心に火をつけた。

この50年の間「もしスマイルが完成していたら」という、ファンメイドの海賊版「SMiLE」はたくさん存在する。データはあるのだから、あとは組み立てるだけでいいからだ。

 

そして、実は復活を果たしたブライアン本人が2004年に「SMiLE」を発表している。ただし、これもリテイクされているので若々しさ溢れるハーモニーは失われ、なによりもブライアン本人が「SMiLE」のアイデアを忘れてしまっていたため、サポートバンドのリーダー、ダリアン・サハナジャが再構築したものであり、真にブライアンの作品とは言い難いたい。ちなみにファンからは「04SMiLE」と呼ばれて別物扱いされている。

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そして、ここからが面白いのだが、海賊版も当初は曲を適度に並べただけだったのだが、ファンが徐々にそれぞれを分析しだし、実は一貫したテーマがあるのではないかと推測され始めた。

ドラッグと酒とプレッシャーにつぶれてしまったブライアン本人よりも、冷静に彼に注視しつづけたファン達の方が当時のかれをより深く理解していたというところだろうか。

僕が最も納得の行った海賊版ビートルズの未発表曲の販売等でも有名な「パープルチック」のデータより作られた「THE BEACH BOYS - SMiLE (Purple Chick Reconstruction) (1967)」を是非聴いて欲しい。

 

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どうだろうか?普通にベッドタイムミュージックとして聞き流しても十分なほどチルで美しいサウンドなのだけれども、既存のバンドとは全く異なる複雑で不自然にズレた音と音の積み重ねにどこか狂気を感じる仕上がりだし、細かく聴けば、これが如何にDOPEでサイケデリックな作品かわかっていただけると思う。

 

軽く説明すると、アルバムのA面は開拓時代からアメリカの歴史をなぞった展開になっており、最後の曲Surf's Upでその価値観を崩壊する流れ。

そしてB面は,土-Vega-Tables、風-Wind Chimes、火-Mrs. O'Leary's Cow(The Elements:Fire)、水-I Love To Say Da Da(Cool, Cool, Water)の4つのエレメントで構成され、最後に彼の母親の言葉「犬は振動を感じることが出来る」から産まれたGood Vibrationsで締めくくられる。

 

最後に、実は2011年にようやく「SMiLE」は発売されている。ところが散々海賊版を聴いてきたファンにとってこれは、あまりにも目新しくなかった。むしろファンたちが解読してきた謎をそのままなぞった形であって公式に海賊版の解釈がただしいと言っただけのものだった気がする。

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実際の所当時のブライアンが作りたかったものは残っていない。何が正しく何が間違いなのかはブライアン当人にももはやわからない。

だからこそ、ときにはイージーリスニングとして、またときには一音一音に耳を凝らし、その深層まで潜り込んで楽しんでみてはどうだろうか?

 

僕がロック史上最高に素晴らしいと思う「SMiLE」は永遠に未完成のままだ。

 

 

追記

僕が冒頭で言ったアイドル、現THERE THERE THERES、元BELLRING少女ハートにハマるきっかけとなったこの曲はまさにブライアン・ウィルソンの狂気と「神に捧げるティーンエイジシンフォニー」を連想させた。偶然かもしれないけど、SMiLEを聴いてくださった方に少し納得してもらえたら幸いです。

 

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